目と目を合わせてからはじめましょう
 辺りを確認した雨宮が後部座席のドアを開けたので、降りてもいいのだろう。

小さな門を開けて、玄関に向かうがその斜め後ろを雨宮がついてくる。逆に怖い。
玄関の鍵を開けて中に入る。

「セキュリティーの確認をしてまいります」

雨宮は外でピピーと音を出したり、スマホで何やら話をしたりしている。


部屋の電気を付けて、脱いだ上着をファーにバサッとおいた。

ピンポーン
インターホンが鳴り、玄関のドアをあける。

「必ずモニターで確認してから、玄関のドアを開けてください」

雨宮は、無表情のまま言った。
普段は確認してますよ。この状況で、どう考えてもあなたしか居ないでしょ。そんな事を言っても仕方ない。

「はい。気をつけます」

「外の防犯カメラと、セキュリティに異常はないです。念の為、中も確認させていただきます。

えっ。入るの? 片付けてないんだよな。仕方ない。

「どうぞ」

「お邪魔します」

 雨宮は、玄関に足を踏み入れようとして、一瞬外に鋭い視線を向けた。

「どうかされましたか?」

「いえ。お邪魔します」

 リビングに踏み入れた足が一瞬だけ止まった。


「今朝、慌てていたもので、散らかっていてすみません」

「いえ。すぐに終わりますので」

そういって、モニターを確認し始めたた、雨宮の体が少しふらっとなった気がした。顔を見たが、相変わらず無表情のままだ。気のせいだったみたいだ。

「問題はないよようです」

そう言って、玄関へ向かう雨宮の後を追った。あと少しで、玄関とのところで、雨宮は階段の手すりに捕まった。

「大丈夫ですか?」

咄嗟に手を出したのが、全ての失敗だった……


「大丈夫です。すみません……」

手すりかから手を離した彼が、差し出した私の腕の中へと倒れ込んできた。当然、こんな大男を支えられるはずもなく、そのまま二人で倒れ込んでしまった。

「ちょっと、ちょっと、しっかりしてください」

雨宮の肩を叩いた。いや、叩くしかできなかった。私に覆い被さるように、雨宮が倒れ込んだからだ。

苦しいーーー

もう一度、思いっきり雨宮の背中を叩いた。

すると、雨宮は顔を上げた。
今だ! 体をずらした途端、また、倒れてしまった。

ええ〜〜〜 
どうして〜〜

今度は、私の胸の上に、彼の顔がのっている。
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