目と目を合わせてからはじめましょう
〜雨宮太一〜
ププッ ププッ
デスクの内線に手を伸ばした。
「はい。雨宮です」
『市川様がお見えです』
「わかりました」
事務所のレセプションに行くと、一応それなりにスーツを着こなした、彼女の弟悠矢が立っていた。俺に気付くと軽く頭を下げた。
「社長が待ってます。こちらへ」
「本当に俺なんかでいいんですか?」
一歩後ろを歩く悠矢は、辺りを興味あり気に見回している。
「さあ? 決めるのは社長ですからね」
「ええっ。 雨宮さん、話は出来てるって言ったじゃないですか?」
「ああ。腕のいい運転手がいるって言ってあるだけです。あとは、あなたの行動しだいですよ」
「げっ。無理かも」
悠矢が、自信なさげな声を出した。そう言ったが、社長との話はついているし、俺の目に狂いはないだろう。
社長室と書かれた部屋のドアをノックした。
「はい」
「失礼します」
俺は、悠矢を連れて社長室に入った。
「市川悠矢です。よろしくお願いします」
「まあ、かけてくれ」
促されたソファーに座ると同時に、悠太は持っていた封筒を差し出した。社長は封筒の中身を出した。しばらくじっと見てから、悠太へ視線を移した。
「いくつか質問してもいいかね?」
「はいっ」
いつもより強張った声に、緊張しているのがわかる。
「私が知るには難関と呼ばれる大学に、入学と同時に退学しているようだが、理由を教えてもらえるかね」
「あ…はい。入学までがゴールだっんですかね。入学式には行きましたが、何を学びたいのか分らなくなくなったのが正直なとこです。すみません」
「別に、謝る事はないよ。君は正直な人なんだな。それなら、なぜ、うちへ来ようと思ったのだね?」
「ええ。雨宮さんに、車の知識と運転技術を生かしてみないかと…… 人を守る事にやくに立つかもれいと言われて、今までそんな事を考えた事もなくて。自分に何ができるのか試してみたくなりました」
「そうか…… うちは学歴は問わない、ただ、油断すると依頼人だけでなく、自分の命を落とすことにもないりかねない。それなりの覚悟は出来ているのかな?」
「えっ? 雨宮さん、そんな恐ろしい事を言ってましたっけ?」
悠矢は俺の顔を見る。言わなくたって、そのくらい分かるだろ?
「私と一緒にいたのですから、危険がある事には気づいていると思っていましたが」
「そりゃ無理じゃないのか、湯之原氏の警護だったんだから、危機感はなかっただろ?」
社長が、チラリと俺を見て言った。
「そういう問題ではないと思いますが」
確かに、いつもの警護とはかなり違ってはいたが…… SPの仕事だった事ぐらいは、さすがの悠矢でも分かるだろ。
「まあいい。太一が推薦するのだから、それなりの腕があるんだろう。とにかく、三か月間研修してみなさい」
「あっ。はい。よろしくお願いします」
「しっかり研修しなさい。その成果で判断しよう。くれぐれも怪我のないように」
「はい」
しっかりと返事をして頭を下げた悠矢を連れて社長室を出た。
こうして、悠太は警護の道に足を踏み入れたのだ。
ププッ ププッ
デスクの内線に手を伸ばした。
「はい。雨宮です」
『市川様がお見えです』
「わかりました」
事務所のレセプションに行くと、一応それなりにスーツを着こなした、彼女の弟悠矢が立っていた。俺に気付くと軽く頭を下げた。
「社長が待ってます。こちらへ」
「本当に俺なんかでいいんですか?」
一歩後ろを歩く悠矢は、辺りを興味あり気に見回している。
「さあ? 決めるのは社長ですからね」
「ええっ。 雨宮さん、話は出来てるって言ったじゃないですか?」
「ああ。腕のいい運転手がいるって言ってあるだけです。あとは、あなたの行動しだいですよ」
「げっ。無理かも」
悠矢が、自信なさげな声を出した。そう言ったが、社長との話はついているし、俺の目に狂いはないだろう。
社長室と書かれた部屋のドアをノックした。
「はい」
「失礼します」
俺は、悠矢を連れて社長室に入った。
「市川悠矢です。よろしくお願いします」
「まあ、かけてくれ」
促されたソファーに座ると同時に、悠太は持っていた封筒を差し出した。社長は封筒の中身を出した。しばらくじっと見てから、悠太へ視線を移した。
「いくつか質問してもいいかね?」
「はいっ」
いつもより強張った声に、緊張しているのがわかる。
「私が知るには難関と呼ばれる大学に、入学と同時に退学しているようだが、理由を教えてもらえるかね」
「あ…はい。入学までがゴールだっんですかね。入学式には行きましたが、何を学びたいのか分らなくなくなったのが正直なとこです。すみません」
「別に、謝る事はないよ。君は正直な人なんだな。それなら、なぜ、うちへ来ようと思ったのだね?」
「ええ。雨宮さんに、車の知識と運転技術を生かしてみないかと…… 人を守る事にやくに立つかもれいと言われて、今までそんな事を考えた事もなくて。自分に何ができるのか試してみたくなりました」
「そうか…… うちは学歴は問わない、ただ、油断すると依頼人だけでなく、自分の命を落とすことにもないりかねない。それなりの覚悟は出来ているのかな?」
「えっ? 雨宮さん、そんな恐ろしい事を言ってましたっけ?」
悠矢は俺の顔を見る。言わなくたって、そのくらい分かるだろ?
「私と一緒にいたのですから、危険がある事には気づいていると思っていましたが」
「そりゃ無理じゃないのか、湯之原氏の警護だったんだから、危機感はなかっただろ?」
社長が、チラリと俺を見て言った。
「そういう問題ではないと思いますが」
確かに、いつもの警護とはかなり違ってはいたが…… SPの仕事だった事ぐらいは、さすがの悠矢でも分かるだろ。
「まあいい。太一が推薦するのだから、それなりの腕があるんだろう。とにかく、三か月間研修してみなさい」
「あっ。はい。よろしくお願いします」
「しっかり研修しなさい。その成果で判断しよう。くれぐれも怪我のないように」
「はい」
しっかりと返事をして頭を下げた悠矢を連れて社長室を出た。
こうして、悠太は警護の道に足を踏み入れたのだ。