目と目を合わせてからはじめましょう
 「せっかくだから、社内を案内するよ」

 研修員となったのだから、敬語の必要はない。

 「ありがとうございます」

 定時をだいぶ過ぎており、社内に残っている社員はまばらだが、警備課は二十四時間体制で動いている。

 「なんか、すごいですね。こんな時間なのに、仕事している人がこんなに大勢いるなんて」

 「まあな、どちらかというと、夜中の方が通報が多かったりするからな。車庫も見ておくか?」

 「はい。どちらかというと、そっちの方が興味ありますね」


 地下の駐車場へ行くと、警備車と警護用の車が数十台おかれている。

 「結構な車の数ですね」

 「ああ。まだ数台は警備に出ていると思う。うちは、車の整備も業者に出さずにやっている。整備士もいるし、それに、ある程度の車の知識は持っていないと、いざという時に対応できないからな」

 「なるほど」

 悠矢は、興味があるようで車の種類だとか、整備室などを見て回り始めた。そこに、整備士の滝川さんが警備から戻ってきた。

 「明日から、研修に来る、市川悠矢さんです。主に、車両部で研修になると思いますのでよろしくお願いします」

 「市川悠矢です。よろしくお願いします」

 「ああ。太一さんのおっしゃてた方ですね。整備の滝川です。よろしく」

 いつもながら、人良さそうな笑顔で滝川は悠矢を受け入れてくれた。

 「どの車も、綺麗に磨かれてて、整備もしっかりされてる」

 「さすがだ、車に詳しそうだな。もちろんだ、車が壊れちゃ、守れるものも守れない」


 滝川が車について話し始めると、悠矢は、目を輝かせて聞き始めた。まあいいかと思っていたが、一時間近く経っても、二人の話は盛り上がるばかりだ。

 悠矢を置いて帰ってしまおうかと思った時だ、胸のポケットのスマホが鳴った。

 通報の通知だ。

 ポケットから出した、スマホの画面を見る。

 「えっ!」
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