目と目を合わせてからはじめましょう
 雨宮は小さく息をついた。


 「自分で、大丈夫だって言ったのに、ごめんなさい。少しだけ、そばにいてもらえませんか?」

 怒られるかと思ったけど、それでも少しだけそばいにいて欲しかった。


 雨宮に、抱きしめられたままだ。でも、その胸の中は、がしっりと守られているようで安心する。

 「はあー。だから言っただろ。俺だって、心配したんだ。」

 この状態で言われると、どう理解していいのかわからない。

 「ありがとうございます」

 お礼を言うのが正しい答えなのかわからないが、他に何と言えばいいのだろうか?


 抱きしめられたまま顔を上げると、雨宮の目と重なった。じっと見つめてくる雨宮の目を離すことが出来ない。

 どうしたんだろう私?

 すごく、すごく胸が苦しい。

 でも、この安心感が欲しくて、ここまで来たのだと気付いてしまった。


 「どうしてか、あんたが気になって仕方ない。気付かないふりをしていようとしたけど、コントロールが効かない。この気持ちに少し正直になって見ようと思う」


 雨宮が言おうとする事が、正直よくわからなくて、私は黙ったまま雨宮を見ていた。

 「そんな顔するな」


 そう言ったかと思うと、雨宮の手がそっと私の頬に触れた。唇が重なったのだと気づくのに少し時間がかかった気がする。だけど、雨宮の唇が離れることは無かった。

 重なったままの唇が角度を変えた。

 うわっ

 苦しくなって、息を吸った瞬間、雨宮の舌がわずかに開けた口を割って入ってきた。

 舌と舌が出会ってしまった瞬間、全身の力が抜けた。雨宮の手が私の腰を支える。唇を重ねたまま、雨宮が靴を脱いだのがわかり、私も靴を脱ぐ。


 そのまま、玄関を上ると壁に押し付けられた。キスは止まない。

 どうして? と頭で考えようとするのに、口の中を弄る舌に意識がいってしまい思考が回らない。


 雨宮の手が、私の羽織っていたカーディガンを肩から落とした。でも、その手を止める事が出来なかった。だって、なんだか気持ちよくて、頭がぼーっとなってきて力が入らないのだもの。
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