友達じゃ、やだ。
第一話
自慢だった。
航くんと幼なじみで、友達でいられることが。
私には、自慢出来るものが何もなくても。
航くんのそばにいられることが。
嬉しかってたまらなかった。
……コンコン。
部屋のドアがノックされた。
「はい?」
「かのん、ちょっといい?」
私の部屋に顔を出したのは、お兄ちゃんだった。
「何?」
「今さ、オレの部屋に来られる?航が遊びに来てるんだけど、かのんに聞きたいことがあるってさ」
「えっ、航くんが来てるの?」
読んでいた小説を持ったまま、私はガタンッと椅子から立ち上がる。
お兄ちゃんと航くんは同い年で、私にひとつ年上の高校二年生。
私達三人は同じ高校に通っているけれど、今日、航くんが家に来ていることは知らなかったなぁ。
「……本当、お前、航のこと好きだよな」
と、お兄ちゃんが呆れたように言う。
「そ、そんなんじゃないもん……」
反論はしたものの、図星なので声は小さい。
お兄ちゃんは苦笑いを浮かべて、
「航が待ってるから、行こっ」
と、部屋から出て行くので、私も慌ててついて行く。
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