友達じゃ、やだ。
私は迷わず、
「どうぞ」
と、席を譲った。
小さな男の子が嬉しそうに、
「ありがとう」
と、言ってくれる。
代わりにドアのそばに寄って行くと、そこには航くんがいた。
「えっ、航くん」
「一緒になったな」
と、笑ってくれる。
それから並んで、ドアの向こうの景色を見ていたら。
「さっきの、見てた」
と、航くんが呟いた。
「あ、うん」
「かのんは、そういうこと、サラッとするよな」
「え?」
「優しいんだなって言ったの」
「そんなことないけど」
照れてきて、俯く。
「まぁ、ずっと知ってたけどな」
と、航くんは嬉しそうに笑った。
地元の駅に着いた。
改札を出て、駅のロータリーを歩いていると。
小学生の女の子が慌てて走っていて、私達の目の前で転んだ。
「大丈夫?」
と、航くんがそばに寄って行った。
立ち上がった女の子は頷く。