友達じゃ、やだ。
第二話
ずっと片想いをしていた。
航くんは一つ年上だけど。
大人っぽくて。
優しくて。
いつだって、私のそばにいてくれた。
一緒に歩けば、歩幅を合わせてくれる。
何かあれば、隣にいて慰めてくれる。
頑張れと応援してくれて、楽しいことは一緒に笑ってくれた。
ずっと。
好きだったんだよ。
『ごめんっ』と、言われた。
その『ごめんっ』は、どういう意味?
キスされた。
驚いたけれど、でも。
嬉しかったのに。
航くんの『ごめんっ』が、私を浮かれさせてくれない。
朝、起きて。
鏡の前で身支度を整えていたら。
「かのん、何かあったの?」
と、お兄ちゃんが寄ってきた。
「え?何かって、何?」
とぼけてみる。
だって。
あんなこと、兄弟には言えない。
「いや、昨日から様子がおかしいし。ってか、航も何も言わずに帰っちゃったし」
「急いでたんじゃない?」
「勉強道具、全部置いて帰るほど?おかしくね?」