ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「う~……っ」


拒絶されたということは、フラれたということ。

芽生えた気持ちは、わずか三十秒で蓋をされた。突っぱねられた。

こんなことなら、自分の気持ちに気づかなければ良かった。言わなければ良かった。今の私のままで良かった。

だからさようなら、香月雅。

楽しい恋は、もう知らなくていい。私は今までの私のまま、毎日を過ごしていく。だから、もうバイバイ。


「例え偽りでも……少しくらい愛してくれていたのかな」


自嘲気味に笑った私の視界に、黒ネコのマスコットが写る。濡れているはずなのに、握ると少し、温かい気がした。




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