ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「今なら、姫岡さんの気持ちがわかるなぁ」
「姫岡さん?香月くんの彼女・姫岡さん?」
「うん。香月雅に心酔してる姫岡さん」
何番目の彼女でもいいから付き合って、と言った姫岡さん。あの時は、なんて軽率な発言と耳を疑ったけど……。
『好き……なんだと思う』
私の気持ちの切り替えの早さに、耳どころか、自分自身を疑う。姫岡さんより、むしろ私の方が軽率だ。
「こんなハズじゃなかったんだよ。私は今度こそ平和な恋をしようって、そう思っていたのに」
「まぁまぁ。どうなるか分からないのが恋なんだし。だからホラ、今だってさ。これから先どうなるか分かんないじゃん?」
「……もう、いいの」
「え?」
突然、急に教室が騒がしくなる。ドアを見ると、香月雅が登校していた。