ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「おはよ~、雅くん」
「おはよう」


いつものニコニコ笑顔。昨日、一人の女の子(私)を振ったとは、思えない通常運転。


(私を振ったことなんて、気にもしないんだ……)


さっき小夜ちゃんは「この先どうなるか分からない」って言ってた。でも私は、もう懲り懲り。

これ以上に傷つきたくないから、勉強と友情に励む。そろそろ体育祭もあるし、学校行事をいっぱい楽しむ。恋愛は諦める。その方が、自分にとって百億倍イイ。


「あ、ちなみに仁奈」

「ん?」

「私は香月くんと、今のまま仲良くしててもいい?推しを見つけたからには推していかないと……あ、心配しなくても、仁奈と一緒にいる時は話しかけないから!」

「ご自由に……」


小夜ちゃんの推し愛は止められないもんね。

でも香月雅の過去を、小夜ちゃんに勝手に話したと知られれば、それはそれでマズイので。小夜ちゃんにはくれぐれも、さっきの話を内密にしてもらうよう頼んだ。
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