ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
――そうして。
同じクラスと言えど、決して交わらない私と香月雅は、何事もなく放課後を迎える。
いつもなら「仁奈~」って私の席にきてくれるのに、彼の姿すらない。
「そう言えば、朝の挨拶もなかったな」
『かわいいね、仁奈』
あれが、朝の挨拶だった。数日だけど、かかさず言ってくれていた。あれは香月雅なりの愛だったんだろうか……なんて。もう接点がないから、今となっては分からないけど。
「はぁ……」
ふと視線を下げると、カバンにつけていた黒ネコと目が合う。……よく合うなぁ。もしかして魂が宿ってるとか?まさかね。
(昨日はコレを交換していたのに、まさか今こんなことになってるなんて。ウソみたい)
そう言えば……香月雅も昨日、白ネコをカバンにつけていた。私は外せなかったけど、香月雅はどうなんだろう。