ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
――君、愛されたいんでしょ?なら無茶苦茶に愛してあげるよ。……偽りで良ければね
と言われたんだから。ゆがんだ思考回路を前に、私が辛辣な言い方になるのは当たり前だ。
「一つ、聞いていい?」
「もちろん」
「今、いったい何人の彼女がいるの?」
この質問に、香月雅は驚いた……なんて事はなく。目を閉じて「ん~」と、さも考えている素振りを見せた。頭の中、ろくに数えちゃいないくせに。
「両の手に入りきらないなぁ」
「最低でも十人いるってこと?……最低」
最後の方は、ボソッと。本人に聞こえないように言ったのに。
ちょうどサッカー少年たちが休憩を始めたものだから、静まり返った公園に、私の声がよく通った。もちろん、隣に座る香月雅の耳にも届いてる。
届いている、のに。この笑みだ。
「最低」と言われたのに、笑ってる。
何を考えているか分からない、私に対して何を思っているか分からない――そんな分からない事だらけの、不信感たっぷりの笑みを浮かべながら。香月雅は、切れ長の瞳で私を見つめている。