ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

「白ネコは仁奈」と言っていた。その白ネコを……もう外しちゃったかな。ってか、普通なら外すよね。私も、今日帰ったら外さないと。


「はぁ~~」


なんていうか、嫌になる。一日の色んな場面で、香月雅の面影が頭をよぎる。悲しくなるから、もう思い出したくないのに。


「仁奈、一緒に帰ろう?」

「小夜ちゃん、帰るかえる……あ!」


黒板の右下に、赤チョークで書かれた文字を見つける。

【数学小テスト補習】

そうだ。この前の数学で、授業終わりに小テストがあった。でも上の空で解いたら、赤点になったんだ。

確か、このクラスで補習するって言ってたよね?わ~、最悪だ。小夜ちゃんと帰れない。


「さ、小夜ちゃん……」

「……」


半目で黒板を見つめていると……さすが小夜ちゃん。私の置かれている状況を理解したらしい。「お先~」と、片手を挙げてとっとと帰ってしまった。

小夜ちゃんごめん、明日は必ず一緒に帰るから……!
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