ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「俺、隣のクラスの響谷(ひびや)翔(しょう)」

「このクラスの小里仁奈です」

「仁奈?可愛い名前じゃん」

「!」


香月雅タイプ!?かと思いきや、響谷くんはそれきりで。話題は、すでに補習の話へと移っていた。

さっきの発言は女子を口説くためとか、そういう意図があったわけじゃないみたい。


(しばらく香月雅と一緒にいたから、男はみんな口説くもんだって思ってた。いかんいかん、あの人が例外なだけ)


響谷くんは、髪は香月雅ほど長くもなく、かといって短髪でもない深い茶色の髪。顔は整っていて、かっこいいけど、ちょっと強面かな。でも女子にモテそう。


「仁奈は、よく補習受けるのか?」

「今回はたまたま……かな。テスト中に考え事しててさ。って、言い訳っぽいよね」

「へぇ、羨ましいな。俺、部活してて授業中いつも寝ちゃうからさ。小テストとか分けわかんねーんだよ」


その証拠にコレ、と。響谷くんは五点と書かれた小テストを見せてくれた。ご、五点……!
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