ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「あ、あのさ」
聞き返そうとした、その時だった。
突然に感じた気配。それは後ろからで……知った香りが、鼻孔をくすぐる。
振り返ると、そこにいたのは香月雅。今日も変わらず危険な香りをまとっていて、顔にはニコニコ笑顔……じゃなくて、眉間にシワを寄せて怒った顔。
(香月雅……?)
すると私と同じく振り向いた響谷くんが、彼の姿を見つける。
「あれ?香月じゃん。お前って頭が良くなかったか?」
「……忘れ物を取りに来ただけだよ」
「ふーん?」
「それより、さっき……」
香月雅が「さっき」と言った時。瞬時に反応したのは、私。