ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
スッ
だけど香月雅はおかまいなし。私の制止も聞かず、更に手を這わせてふくらみに到達した。だけど揉んでいるわけじゃない。でも今にも力を入れられそうで、掴まれそうで気が気じゃない。
「や、いや……やだぁ……っ」
「……」
「香月、雅ぃ……っ」
「……はぁ」
恥ずかしさと焦りと恐怖で泣く私を見て、香月雅はため息をついた。面倒な奴だと呆れられたのかと、そのため息に動揺する。
「ごめ、ごめん、なさい……っ」
「……なにに」
「分からないけど。怒ってるから……っ」
「……違うよ」
「え……?」
香月雅は、私の胸から手をどけた。行き場を失った手は、そのまま私の背に回る。
ギュッ
驚くことに、抱きしめられた。しかも、かなり優しく。まるでガラスでも触っているかのように。まるで大事なものに触れているように。
「ごめんね、仁奈」
「……」
息を乱しながら、涙を流しながら。私は震える手で、香月雅の頭に、そっと手を置く。
どうして、そうしちゃったのか分からない。
だけど、なんだか……あの香月雅が落ち込んでいるように見えたから。