ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

「……」

チカッ

「え、なに……いたッ」


無言で、私の首に顔を埋めた香月雅。高い鼻を何度かスリスリ擦られた後……一瞬の痛みが走る。

それは本当に一瞬で、なんの痛みか分からないほど。蚊に刺された?でも、ここは室内だし。


「ねぇ、仁奈」

「……ん?」


のそり、と。香月雅が頭を持ち上げる。そして私と視線を合わせた。


「他のヤツの物になっちゃヤダ」

「え」


抱きしめられていた体が急に離されたと思ったら。さっそうと、香月雅は教室を後にした。混乱する私を、一人残したまま。
< 118 / 225 >

この作品をシェア

pagetop