ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「……」
チカッ
「え、なに……いたッ」
無言で、私の首に顔を埋めた香月雅。高い鼻を何度かスリスリ擦られた後……一瞬の痛みが走る。
それは本当に一瞬で、なんの痛みか分からないほど。蚊に刺された?でも、ここは室内だし。
「ねぇ、仁奈」
「……ん?」
のそり、と。香月雅が頭を持ち上げる。そして私と視線を合わせた。
「他のヤツの物になっちゃヤダ」
「え」
抱きしめられていた体が急に離されたと思ったら。さっそうと、香月雅は教室を後にした。混乱する私を、一人残したまま。