ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「え、なに?今の」
『他のヤツの物になっちゃヤダ』
さっきの、私に言ったの?
昨日、私を拒絶したくせに?
「なに、それ……勝手すぎっ」
むかつく、人を何だと思ってるの。私は香月雅の言いなりでも、おもちゃでもない。
「でも、さっきの顔……」
眉間に寄ったシワ。真一文字に閉じられた口。力強く私を掴む手――いつも余裕そうな香月雅からは想像できない、切迫した雰囲気。
あの顔に、私の心が一気に引き戻される。
「~っ」
ずるい、ずるいずるい。
あんな顔されたら、突っぱねることも出来ない。すぐ出て行かれたんじゃ文句も言えない。ズルいギャップに、また惹かれてしまう。
「もう、勘弁してよ……っ」
足に力が入らず、ズルズル座り込む。
結局、補習の時間が終わるまでに、赤い顔は元通りにならなくて。ズル休みしてしまった。