ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
次の日。
登校していると、後ろから「仁奈」と呼ばれた。
「よ、昨日ぶり。おはよ」
「おはよう、響谷くん」
傘をさしていたのに、よく私だって気づいたなぁ。
今日は雨だから徒歩通の人は、みんな傘をさして歩いている。心なしか歩道が狭く感じるのは、色とりどりの傘のせいか。
「いつも仁奈って、この時間なのか?」
「うん、だいたいね。響谷くんも?」
「いつも俺は朝練あるんだ。だから早ぇよ。この天気じゃ、さすがに休みだけどな」
「ということは、サッカー部かテニス部か……」
「当たり、サッカー」
ニカッと、雨雲を晴らしてしまいそうな笑顔。ま、眩しい。
すると歩きながら「そう言えばさ」と、響谷くんが真顔で尋ねる。