ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


次の日。

登校していると、後ろから「仁奈」と呼ばれた。


「よ、昨日ぶり。おはよ」

「おはよう、響谷くん」


傘をさしていたのに、よく私だって気づいたなぁ。

今日は雨だから徒歩通の人は、みんな傘をさして歩いている。心なしか歩道が狭く感じるのは、色とりどりの傘のせいか。


「いつも仁奈って、この時間なのか?」

「うん、だいたいね。響谷くんも?」

「いつも俺は朝練あるんだ。だから早ぇよ。この天気じゃ、さすがに休みだけどな」

「ということは、サッカー部かテニス部か……」

「当たり、サッカー」


ニカッと、雨雲を晴らしてしまいそうな笑顔。ま、眩しい。

すると歩きながら「そう言えばさ」と、響谷くんが真顔で尋ねる。
< 121 / 225 >

この作品をシェア

pagetop