ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「俺、本気だからな。勝手に〝なかったこと〟にするなよ?」
「ど、どうして私のこと?だって知り会ったばかりだし……」
「どうしてって」
響谷くんの口角が上がる。傘で周りの目がシャットアウトされているのをいいことに、傘の柄を持つ私の手を、響谷くんは上から握り締めた。
ギュッ
「え、あの、響谷くんっ?」
「はは。そういうところ」
「え?」
すぐ手を離した響谷くんと、視線がぶつかる。私を見る時だけ強面の顔が柔らかく見えるのは……きっと気のせいじゃない。
真っすぐ下へ落ちる雨粒みたいに。私へ向かう響谷くんの視線は歪みない。ブレることなく、一直線だ。
こんなにもストレートな気持ちを受けたことがないから……自然とドキドキしてしまう。