ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「昨日メモで〝困ったことがあったら相談して〟って格好つけたけどさ。無理だわ」
「え?」
「〝登録した〟だけでもいいから、ってゆーか空欄でいいから早く送って。待ち遠しくてたまんねぇ」
「わ、わかりました……っ」
返事が尻すぼみになったのを聞いて、響谷くんも「わりぃな」とはにかみながら、私の頭を撫でた。
その後、響谷くんは傘を畳んで下駄箱へ向かう。遠目に写る彼の背中を見て……
「はぁ〜」
恥ずかしさで固まっていた心臓が、やっと動き出した。
「響谷くんの言動、心臓に悪すぎるよ……っ」
ああいうのを〝溺愛〟って言うんだろうか。未経験のジャンルだから、判定のしようがないけど……。
すると、
「おっはよー、仁奈。さっそくだけどぉ、私に話すことがあるよねぇ?」
「そ、その通りです。小夜ちゃん……」
察しがいい小夜ちゃんに、さっそく見つかった。
二人して教室に着いた後、昨日起こった全てを説明する。すると案の定というか。
「響谷くん、いい……!!」
小夜ちゃんの推しが、また一人、爆誕した。