ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

昨日の香月雅は、香月雅らしくなかった。いつもの余裕なんて一切感じなかった。それくらい荒々しいキスだった。

……何を思っていたんだろう。まさか私が告白される現場を見て、焦ったとか?


(……いや、それはないか。昨日の姿だって、偽りかもしれないし)


ジョットコースターみたいに、気分が乱高下を繰り返す。なんか気持ち悪くなってきた……。雨の日は頭が重くなるから、余計に。


「私が思うにさ。仁奈には香月くんじゃなくて、響谷くんが合ってると思うよ」

「えぇ?」


現在、興奮冷めやらぬ様子で迎えた放課後。

朝よりもテンションが上がった状態で、鼻息荒く話す小夜ちゃん。今日は疲れる時間割だったけど、新☆推しを見つけた彼女は疲労とは無縁だ。さすが小夜ちゃん、レジェンド。


「仁奈の今までの恋愛傾向からすると、選ぶのは香月くんじゃん?」

「う……」

「だけど仁奈自身が〝次は平和な恋をするんだ〟って言ったじゃん?香月くんと比べると、響谷くんは女の影も噂も聞かないし。しかもサッカーに熱心とあれば、浮気をする心配もない。趣味がある男子って、それだけで花丸だから」

「花丸?」

「そりゃそうでしょ。男子なんて、趣味が無かったら暇じゃん。暇すぎるじゃん。暇なら女子と遊ぼうかな?ってなるじゃん。その可能性がナイだけ、響谷くんは超得点高いよね」

「なるほど……」


男子に得点があるのか、と。小夜ちゃんの目利きに感心する。

響谷くんは高得点。
じゃあ、香月雅は?

< 127 / 225 >

この作品をシェア

pagetop