ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

パシッ



「どこの行くの。話、まだ終わってないよ?」

「は、話って……っ」



始まってもいない話を、あたかも存在するかのように言っちゃうあたり。逃げる私を、まるで非難するような口ぶりで話すあたり。

やっぱりこの男は危険だと、優しく握られた腕から感じる。



「とりあえず座って。ね?」

「……話すことないよ。今度こそ私は、あなたのようなワルい男には引っかからないって。そう決めてるから」

「へぇ。俺みたいなワルい男が、君の周りにはゴロゴロいるの?興味あるなぁ」

(しまった)



遠ざけるつもりが、逆に好奇心をくすぐってしまった。

あれやこれやと別れ際のセリフを言っても「それよりさっきの話」と、振り出しに戻される。


どう回避しても、香月雅に邪魔され家に帰れそうにないので……仕方なく、自分の恋愛話を披露する。
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