ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

雨、早く止まないかな――思った時だった。頭の後ろで、ツキンと小さな痛みを覚える。え、うそ。まさか頭痛が始まった?

私の頭痛は、短時間で脈打つような激しい痛みを伴う。しかも痛みが本格化する前に頭痛薬を飲まないと、薬の効果が出るのも遅いし、効き目も弱い。

ようするに今、薬を飲まないと。
後々、大変なことになる。


「でも頭痛薬はカバンの中だから、教室に戻らないと。でも先生、怒ってたしなぁ……早く行かなきゃヤバいよね」


怒られるのは嫌いだ。しかも香月雅のせいで補習に出席できず怒られるんだから。まったく理不尽極まりない。


「パッと職員室に行って、パッと帰ろう……」


だけど私の考えは甘かったと、職員室に着いた瞬間に気付く。

日ごろ真面目な私が補習対象になるだけでなく、ボイコットまでしたものだから、先生は私が〝数学に躓き嫌気がさした〟と勘違いしたらしい。「ここの問題はな」と親切丁寧に、補習のプリントを最後まで一緒に解いてくれた。

長期戦が終わったのは、なんと一時間後。まだ降りやまぬ雨を横目に、教室に行くため長い廊下を戻る。


「やっと……終わった……っ」

< 130 / 225 >

この作品をシェア

pagetop