ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

私の部屋じゃなくて私の家のリビングだった――というオチなら、何の問題もない。もっと言えば、小夜ちゃんの家だとしてもNO問題だ。

だけど香月雅。
あなただけは違う。


(どうして私、香月雅の部屋にいるのー!?)


シンプルな部屋、ヴィンテージ風のベッド、シックな黒いシーツ……。昨日お邪魔した香月雅の部屋の内装を、私が忘れるわけもなく。何の因果か、最悪のタイミングで戻ってきてしまった。


(ってか香月雅はどこ?なんで私だけ部屋に一人きり?)


体を起こしていいものか迷う。すると突然、女子の声が足元から響いた。


「いくらお兄ちゃんの頼みだからって、どうして私がこんなことしないといけないのよ」

(……お兄ちゃん?)

「こんな味も匂いもしない煮干し女の、どこがいいのかしら。なんでお持ち帰りしてんの?意味わかんない。雅お兄ちゃん、センスなくなったわね」

(……ん?)


今〝雅お兄ちゃん〟って言った?

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