ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

だけど思い出すだけで嫌な恋愛も、そりゃあったわけで。話している途中、何度か言葉に詰まづいた。


香月雅にバカにされる、と思ったけど、当の本人は常にサッカー少年を見ていて。だけど、私の話はきちんと聞いているらしく「うん」や「それで」と。タイミングよく相槌を打った。



「っていうわけで。私は、もうワルい男とは付き合わないの。例え恋愛の知識が未熟な私でも、笑って受け入れてくれる懐の深い男子と、平和に付き合うんだから」

「へぇ。それで俺は、さっそく爪弾きにされたってわけだ」

(しまった……喋りすぎちゃった)



香月雅は聞き上手だ。この男が相槌を打つと、不思議と喋ってしまう。

こういう所に姫岡さんも依存しているんだろうか。……私は違うけど。



「でもさぁ、小里さん」

「へ?」



同じクラスとはいえ、今まで何の接点もなかった私の苗字を、香月雅は覚えていた。さすが余念がないというか。どんな女子に対しても手を抜かない執着さえ感じる。
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