ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「で、お兄ちゃんの彼女なんだけどさ」

「……」

(か、彼女!?)


「彼女」と聞いても香月雅は静かなのに、私ときたら、寝たふりがバレそうな勢いで反応してしまう。妹さん――美麗ちゃんの変化球、かなりエグい。


「もう大丈夫そうだし、彼女を起こしたら?外が暗くなっても危ないでしょ?」

「仁奈が寝られるだけ寝たらいいよ。必ず送る気でいたし。あと、仁奈は彼女じゃない友達」

(う……)


必ず送る気でいた、なんて胸キュンセリフを言っておきながら、私のことを「友達」と言い切る香月雅。相変わらずひどい人だ。

好きな人にキッパリ「友達」って言われたら、傷つくじゃん。ただの友達がキスするの?お揃いのキーホルダーつけるの?自分のベッドに寝かせるの?――全部ぜんぶ、本人に問いただしてやりたい。
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