ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
(っていうか……)
流れで美麗ちゃんに協力を頼んだけど、良かったのかな。香月雅が必死に隠してきたことを内緒で聞くのって、悪い事じゃないかな。
香月雅は、こういう事されるの嫌がるよね。バレた時に、私のことを軽蔑するんじゃないかな。
(……いいや。軽蔑されたっていい。だって、こうでもしないと一生、香月雅は自分のことを話さないだろうから)
時に開き直ることは重要だと、これまでの経験で知った。だから今、ちゃんと聞く。これから香月雅と、正面から向き合っていくために。
「でもさ、お兄ちゃん。ただの友達にしては、丁寧な扱いしてるよね?」
「そうかな。友達が苦しそうにしてたら、手助けするのは当たり前だよ」
「ご丁寧に、首にキスマークまでつけて?」
「!」
空気が、ゆらりと揺れた。固く目を閉じていても、肌で感じる。これは香月雅の動揺だ。
……っていうかキスマークって?
私についてるの!?
「俺じゃない。他の奴じゃない?」
「そのキスマのつけ方、絶対にお兄ちゃんだよ。ずっと前、彼女が家に遊びに来た時に、同じ形のがついてたもん」
「……見たの?」
「もちろん、ガン見した」
美麗ちゃんの兄推しは並大抵の覚悟じゃないらしい、どんな発言もお構いなしだ。あの香月雅が〝だんまり〟だもん。