ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

「……今、俺の悪口を考えてたでしょ」

「なんで分かっ、あ……」



しまった!
慌てて口を押さえるも、香月雅は「まぁいいけど」と流してくれた。

……いいんだ。



「それより。さっき小里さんが言ったワルい男って、俺の中で全然ワルくないんだけどな」

「へ?」

「むしろ――」



グイッ、肩を抱かれる。一気に近くなった距離をものともせず、香月雅は私の顔を覗きこむ。



「俺の方が百倍ワルい男だよ?どれだけワルいか、経験してみる?」

「……っ」



するわけ、ないじゃん。

出掛かった言葉を、なんと、香月雅が押し戻した。私の唇にキスするフリをして。



「――ッ。ち、近い」

「強情な小里さんには、言い方を変えようか」



ペロリと、自分の唇を妖しくなめる香月雅。それを間近で見せられると、無意識に上唇がピクンとはねた。
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