ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
(ありがとう美麗ちゃん。私、もう充分だ)
香月雅は私を心配して声をかけてくれた。その後もかまってくれ、何かと私を気にしてくれた。私が純粋に恋を楽しめるよう導いてくれた。自分と同じく間違った道を歩ませないために。
そんなの、そんなのさぁ。嬉し過ぎるよ。
好きな人にこれほど心配してもらって、尽くしてもらって……幸せだ。美麗ちゃんが私の気持ちを代弁してくれたのもそう。私は幸せ者だ。この恋を、最後の最後までやりきったのだから。
(そりゃあさ、香月雅が「俺も好き」って言ってくるのが一番嬉しいよ。だけど、今はもういい)
好き以外の大切な言葉を、香月雅からたくさんもらったから。
『俺が教えるのは〝正しい恋〟じゃなくて〝楽しい恋〟だからね』
恋に正しさなんていらない。自分が楽しいと思った恋を突き進めればいいんだって、大事なことを教えてくれた。今の私には、その言葉だけで充分なの。
そう思っているのに。
「でも……なんでかな」
香月雅が、ため息交じりに呟いた。
「仁奈には、俺みたいな遊び人とは違う、まっとうな恋愛をしてほしいって思うのに。俺と仁奈があまりにも似てるから放っておけなくて、心配してしまって。気づいたら、
どうしようもなく好きになっていたんだ」