ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
(え?香月雅が、私のことを好き?)
頭の中が真っ白になる。
今の言葉、本当なの?
「仁奈を好きと自覚してから、どんどん近寄っちゃってさ。この前なんか、他の奴に嫉妬心を剥き出しにした。
ダメだよね。仁奈の恋愛に、遊び人の俺はいちゃいけないのに」
「お兄ちゃん……」
「ごめん、変な話を長々とした。仁奈が起きそうにないから、今のうちに飲み物を買ってくるよ。何がいい?」
「……抹茶」
「ん」
香月雅の歩く音がして、ドアが閉まる。
二人きりになった室内。だけど二人とも口を開かない。香月雅の本音を聞いて、私も美麗ちゃんも固まったまま。
やっと喋れるようになったのは、香月雅が玄関を出た音が響いた時。
「ちょっと、何やってんのよ」
美麗ちゃんの低い声が、部屋の空気を一変する。