ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
『好き……なんだと思う』
『飲み終わったら家を出よう。送るよ』
この前。
仁奈の告白を嬉しがる俺を見られまいと、慌てて顔を逸らした。そして視界の端で、仁奈の傷ついた顔を見た。
楽しく恋愛してほしいと思っているのに傷つけた、悲しませた。やっぱり俺は最低な男だと、どうしようもない自分に嫌気がさした。
(何が遊び人だよ、聞いてあきれる)
俺みたいな軽くて重い男が、純粋な仁奈を好きになってはいけないと思っていたのに。それでも顔を出す独占欲が、仁奈の心を揺さぶった。
不用心に近づき、自分の気持ちが止まらなくて、後先考えず手を出したこともあった。キスをした。抱きしめた。他の男と話しているのを中断させ、キスマークをつけた。
これ以上はいけない、やめなきゃいけない。止まらなきゃいけない――
そう思っているのに、日ごろ強気な仁奈の照れた顔とか、笑った顔とか。あとは昔の恋愛を話している時に見せる、弱った顔とか。そういうのを見ると、庇護欲がメラメラ湧いてしまった。
俺が守りたいって、思ってしまったんだ。