ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「私、諦めないから」
「!」
「あなたがどれだけ逃げても、隠れても……絶対に追いかける。そしてつかまえる。そう教えてくれたのは香月雅、あなただもん」
「……そんなこと教えてないよ」
仁奈は首を振る。
「この前、私が勇気を出した告白をスルーしたじゃん。あれは〝ここぞという時に相手の嫌がる事をすればいい〟っていう、あなたの教えでしょ?」
「……ん゙ん」
斜め上の解釈に、思わずせき込む。こんな時に皮肉を言うなんて……非常事態だけど可愛いと思ってしまった。あぁもう、俺って本当にダメなやつ。
「だから私も、あなたが嫌がることをする。逃げるあなたを、地の果てでも追いかける。
それに今この時を逃したら、あなたはきっと話をしてくれないだろうし」
「……」
仁奈は勘が良い。俺が告白をスルーしてからというもの、俺の考えを悟ったのか一切接触してこなかった。
安堵したのが半分、物わかりが良すぎて心配になったのが半分。そして今「俺を諦めない」と言ってくれたことに不覚にも泣きそうになったのが、ちょっと。