ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「俺と付き合ったって、良いことなんて一つもないよ?」
「最低一つはあるよ。告白した私が報われる」
「……」
えぇ、それだけ?っていうのが本音。俺と付き合ったら、さぞ幸せな未来を想像しているのかと思いきや。仁奈の頭は、こういう時シビアに働くらしい。
すると俺の落胆を察したのか、仁奈が「勘違いしないでほしいけど」と補足した。
「私にとって、付き合うことはゴールじゃなくて始まりだから。あなたと付き合って、心から向き合って……それから先の〝良いこと〟は、二人で見つけていけばいい」
「!」
「香月雅。あなたが何に躊躇しているか、何となく分かるよ。だから言わせて。
私はね、どんなことも二人で分かち合いと思ってる」
「それって……」
俺の愛が重くてもいいよって、そう言ってくれてる?その上で、俺に笑いかけてくれてるの?