ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


(やっぱズルいなぁ……)


俺が恋を教えていたはずなのに、逆に教えられちゃった。なにさっきの、カッコよすぎるでしょ。

俺を丸ごと好きになったって、どんな殺し文句だよ。そんなの言われたら、片意地はっていた俺がバカバカしいじゃん……いや、実際バカなんだろうな。

だって仁奈を好きなくせに、その気持ちを必死に隠そうとしてるんだから。


ねぇ仁奈。
俺やっと分かった事がある。

恋をすると人は止まれなくなるんだって。たった今、君から教わった。


「ねぇ、仁奈」

「ん?」

「やっぱ俺、無理だった」

「え……」


悲しい表情を浮かべた君に、一歩近づく。


「仁奈を好きな気持ちに蓋をするのも、俺の本音を閉じ込めておくのも、やっぱ無理だ」

「っ!」


たまらなく仁奈が愛おしくて、観念して白旗を上げる。こみあげる感情を俺が隠しもせず近づくものだから、仁奈は両目を開いて驚いていた。

だけど構うもんかって。緊張で震える細い体を、これでもかと強く抱きしめる。

そして――



「七番目は俺がいい。

仁奈、俺を君の最後の彼氏にしてください」




*雅*end


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