ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
ここが外で路上ということを忘れているのか、私を抱きしめたまま離さないし。私の両頬に手を置いて、じっくり目を合わせて来るし。
しまいには「かわいい」なんて。極上の笑みを浮かべて囁くんだから、私のキャパはすぐ限界を迎えた。
「あの、ちょっと……」
「近すぎる、って文句は受け付けない。俺を丸ごと愛するって言ったのは、仁奈だよ?」
ちょっと不機嫌な声。いつもとは違うドキドキする声色を、私の耳にダイレクトに注入する香月雅。
掠れた声は、これでもかというくらい色っぽい。私の耳がビックリするから、やめてほしい。
「違うの。文句じゃなくて……今度、白いネコのぬいぐるみを買いに行こう?」
「白ネコ?なんで?」
「私がキャパオーバーした時用に、私の分身を用意しておきたいから」
「白ネコのぬいぐるみに、俺はキスやハグをすればいいの?」
「うん。私が復活するまで」
真剣に頷くと、香月雅は笑った。「否定されたわけじゃなかった」って、安心したような表情で。