ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
私が思っているほど、香月雅は元カノに言われた言葉に傷ついているみたい。
そりゃそうか、「気持ち悪い」って言われたんだもんね。そんな言葉で自分の愛し方を否定されたら、誰だって悲しいよ。
「ねぇ香月雅。私って、今まで彼氏に愛されてこなかったじゃん?」
「まぁ、うん。そうだね」
私に遠慮してなのか。控えめに頷いた香月雅に、少しだけ笑ってしまう。
今までズケズケ言う時もあったのに、付き合った途端に気遣ってくれてる。彼女の特権を実感できて嬉しい反面、ちょっとだけくすぐったい。
「それで。愛がどうしたの?」
「あ、えっと。私はまだまだ愛が不足しているから、遠慮なく注いでくれていいよ……っていう話。です」
「愛を注いで」とストレートに言うには恥ずかしかったから、「愛」の部分を省略した。
だけど何を連想したのか、香月雅は「注ぐ、か」と。雄の視線で私を見る。色っぽい瞳に、思わずクラッ。
っていうか、キスすら慌てる私相手に、いきなり上級者の風格は毒だ。お手柔らかに、お願いします。
「さ、さっきも言ったけど。あなたがいくら重たかろうと、それを受け止めるだけの器はあるから。だから、さっきみたいに、少しのことで不安がらないで。たくさん愛してくれた方が、私は嬉しいの」