ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「仁奈ってさ、実は数学が苦手なの?」
「うぅん、苦手ってことはないんだけど……」
「だったらさぁ」
はぁ、とため息をつく雅。その視線の先には、黒板の端に書かれた「本日補習」という文字。
「なんで補習の対象なの?仁奈って前もだったじゃん」
「ちょっと頭が働かなかったっていうか……。でも今日一緒に帰れないだけで、明日からは何も影響ないよ?補習もちゃんと終わらせるし」
「そうじゃなくて」
ぷーっと膨れっ面になる雅。そんな顔を見て、小夜ちゃんは秒でスケッチブックを取り出した。動く手の速いこと速いこと。チラリと覗くと、漫画家並みの腕前。
「小夜ちゃん、これは……」
「推しをスケッチして記録に残すのも、大事な推し活だからね」
「写真じゃダメなの?」
素朴な疑問に「私が描くことで、世界に一つだけの推しグッズが生まれるわけよ」と、真顔で諭された。
なるほど……?推しがいる人の共通認識なのかな?今度、美麗ちゃんにも聞いてみよう。