ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「補習のことだけど。俺が怒っているのは、一緒にいられない事じゃなくて、また響谷と一緒になるかもしれないってこと」
「あぁ、響谷くん。今回も一緒なのかな?」
「そんな可愛いこと言ってるから惚れられるんだよ。もっと自重してくれないと」
「……なんて?」
さっきの発言のどこに〝可愛い〟があったの?
疑問を覚える私とは反対に、小夜ちゃんは「指が足りねぇな」と。若干やさぐれながら、スマホを取りだした。そして、なぜか起動するボイスメモ。ただいま雅の言葉をLec中。
「仁奈は無自覚で可愛いから、タチが悪いんだよ。ツンツンしてる割にコロコロ可愛いから、それが癖になるんだよね」
「ツンツン、コロコロ……?」
どんぐりの童謡を連想した時。つい最近いわれた事を思い出す。さっき話題にでてきた、響谷くんが言ったものだ。
『最初に会った時はクールビューティって感じだったからさ。だから余計に……うん、あの笑顔はズリぃ』
『〝登録した〟だけでもいいから、ってゆーか空欄でいいから早く送って。待ち遠しくてたまんねぇ』
……あ。
「しまった、響谷くんにメール送ってなかった」
「は?」
(あ、しまった)