ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

しまった!が重なったのは、初めてのことかもしれない。

響谷くんのことを忘れていて「しまった!」と、それを彼氏の前で正直に話してしまった「しまった!」と。

迂闊な口を、急いで手で覆う。当たり前だけど、雅の顔を見ることは出来ない。


だって、さっきの「は?」なんて、笑いながらだよ?ニコニコ笑顔のまま、ムカッとマークが顔中に張り付いてた。

幻覚じゃない。証拠に、雅を覆うただならぬ怒気。レアショットを予感した小夜ちゃんが、すかさずレフ版を広げた。

カシャカシャと写真のシャッター音が鳴り響くなか。私の心臓の音も尋常じゃないほど鳴っている。ドクンドクン、なんて可愛いものじゃない。ドコドコドコって、もはや轟音だ。


(さっきの雅の発言を聞くに。雅は、響谷くんのことをかなり警戒してる。それなのに私が響谷くんの連絡先を知ってるなんて、怒って当たり前だ)


自分の失態に幻滅する。付き合って早々、雅を不安にさせてどうするの私。

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