ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「私、響谷くんの教室に行って来る」
「……俺が〝行ってらっしゃい〟って言うとでも?」
「雅と付き合ってる、って伝えたいの。私が雅の本音を聞くのが待ち遠しかったように、響谷くんも、私の本音を待っていると思うから」
「……ほんと、ズルいんだから」
少しの間、雅は黙った。かと思えば「うん」と、小さく頷く。許してくれるんだ……?
「じゃあ……行って来るね?」
「ちゃんと(俺の元に)帰って来るのを待ってる」
「すぐ隣じゃない。じゃあ、いってきます」
素直な雅に驚いていると、小夜ちゃんが「香月くんは私に任せて行ってきて!」と、スケッチブックを握る手に力を込めた。
いつも通りの小夜ちゃんで安心する。だって私の周りは、急激に変化してしまったから。
……今も感じる、女子からの視線。それは決して心地いいものじゃない。