ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「見て、あの子よあの子」
「雅くんの彼女?マジ?」
「えー、ショック~」


何がどうショックなのか、聞かなくても予想つくのが悲しい……。

雅と縁が切れた女子を始め、噂話が好きな女子達の矢面に立たされている現在。私が彼女だと雅が公言しているので、こうなることは想像がついた。

だけど……慣れない。足が震えるレベル。女子の怖さを、生きてきて初めて実感した。

そんな混乱のなか迎えた数学の小テスト。結果は、ご存じの通り。補習になるほどテストに身が入らなかった、というわけだ。


「なんで雅くんが、あんな子と?」
「ね~、姫岡さんの方がお似合いだよ」

(そう言えば……姫岡さんは大丈夫かな)


何番目でもいいから雅の彼女になりたいと言った姫岡さん。雅がたった一人と本気で付き合い始めたことを知れば、どれほどショックか――

なんて思っていたら。

響谷くんの教室を覗いた瞬間。姫岡さんと鉢合わせた。姫岡さん、響谷くんと一緒のクラスだったんだ。


「あなた……」


姫岡さんの大きな目は、泣いたのか充血し少し腫れている。それだけで、どれほど雅を思っていたか分かる。

だけど、私は何か言える立場にない。

だから姫岡さんに恥じない付き合いを、雅とするだけ。雅が幸せそうに笑うことが、きっと私が姫岡さんにできる最大の誠意だと思うから。

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