ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「私も雅も、お互いなかなか本音を言えなかったけど……やっと言い合えた。付き合えた今は、幸せを感じてる」

「……そっか。ならいいんだ。いや、よくねーか。フラれたんだもんな、俺」


ハハっとあっけらかんと笑う響谷くん。その笑顔に、あの時の私が何度すくわれたか――響谷くんは知らないだろうな。

ねぇ響谷くん、響谷くんの魅力ってすごいんだよ。

信じられないくらい優しくて、真っすぐで……。私はいつも、響谷くんのストレートな物言いが羨ましかった。あんなに力強く、自分に自信をもって発言できる響谷くんを尊敬してるの。


「仁奈、ありがとうな」

「え?」


ありがとうって……。私、何もしてないよ?

だけど響谷くんは「ありがとうで合ってるよ」と、歯を見せて笑う。

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