ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


(これって雅が〝響谷くんと私を信用してる〟って事だよね?)


ポスン、と。雅に抱き着き、広い背中に手を回す。

私の左手をいくら伸ばしても、自分の右手には届かない。男子の体って大きい。いや、雅だからかな。

部活をしているわけでもないのに、ほどよく筋肉質で胸板もやや厚くて、足も長い。パーフェクトすぎる、ズルいスタイル。


(ごめんね雅、ありがとう)


さっきまで、この大きな体の中で、どれほどの不安が渦巻いていたかと思うと……ぎゅっと、ハグしたくなった。私がいなくなって心配したよね、嫌な気持ちがしたよね。

それでも私を探してくれ、こうやって迎えに来てくれた。そんな雅の優しさに、胸が切なく締まって、泣きそうになる。

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