ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

付き合ってない男女なんて、ただの赤の他人だ。いや、付き合っていても赤の他人なんだけど。

そこから情をとったら、もう何も残らない。それを元カレも承知のことだったんだろうな。

別れ話が終われば「じゃ」と。何事もなかったように、私を置いて自分だけ帰路についた。


自分だけの世界に帰って行く元カレ。あの世界に、ついさっきまで私も加わっていたと思うと……

遠くなる背中に、未練がましく手を伸ばしてしまう。



「……何やってるんだろう。ダメダメ」



梅雨入りしたけど、今日は晴れ。

不幸中の幸いというべきか、フラれた日に雨だった……なんて勘弁してもらいたい。



「雨は降らない、けど……なんか匂うなぁ」



湿気の匂いでもない、アスファルトの匂いでもない。雨が降りそうな独特の匂い……ではないけれど。

いつもは違うソレが、鼻孔をくすぐる。
< 2 / 225 >

この作品をシェア

pagetop