ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「あ、私……こんないやらしい子じゃ、なかったのにっ」

「ふふ。俺はいやらしい子、大歓迎だけど?」


笑う雅。だけど、本当なんだよ?本当に私、こんな積極的なタイプじゃなかったんだから。

だけど惑わされた。雅の匂いを嗅ぐと、危険だと分かっているのに、手を伸ばしてしまった。

触れていると気持ち良くて、安心する。こんなに心地良い居場所をくれるのは、世界でたった一人、雅だけ。


「雅、大好き」

「ん、俺も。こんなに好きになってごめんね、仁奈」


謝りながら、だけども全く悪いことしてない風な声色の彼は。おもむろに私の左手をとり、薬指にキスをした。


「でも好きになった分、一生かけて幸せにするから安心して。だから仁奈……

どこまでも俺に堕ちて、どこからも抜け出せなくなって?仁奈の指に一生の印を刻む、その時まで」

(それって……)


あの時の答えを、心の中でずっと探していた。


『俺を君の最後の彼氏にしてください』


その答えが、今――


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