ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「あー!!!!」


「わ!」
「……あ」


俺たちを見て、大きな声を出す人物。

高い位置で二つにくくられた髪が、まるで意志をもったようにウネウネ動いてるように見える……すごく怒っているらしい。美麗により握りつぶされた抹茶ジュースが、盛大に地面に零れていた。


「私のお兄ちゃんを路上で襲っているのは、どこの痴女よ!回れ右して帰りなさい!」

「ひぃ!ごめんね美麗ちゃん……っ!」


シュバッと、仁奈が俺から離れた。俺が今まで見て来た中で、一番早い動き。


「付き合うのさえ渋々了承したくらいなのに、路上で抱き合うなんて言語道断なんですけど⁉これだから煮干し女は!」

「ま、抹茶ジュース買いに行ってきます!」

「いらないわよ!太らせる気⁉」

「ご、ごめんなさいっ」


美麗の迫力に、思わず後ずさる仁奈。片手でちょんと俺のシャツを掴んでいたけど……美麗の睨みで、これもダメな行為だったと気づいたらしく慌てて離した。

< 216 / 225 >

この作品をシェア

pagetop