ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「あー!!!!」
「わ!」
「……あ」
俺たちを見て、大きな声を出す人物。
高い位置で二つにくくられた髪が、まるで意志をもったようにウネウネ動いてるように見える……すごく怒っているらしい。美麗により握りつぶされた抹茶ジュースが、盛大に地面に零れていた。
「私のお兄ちゃんを路上で襲っているのは、どこの痴女よ!回れ右して帰りなさい!」
「ひぃ!ごめんね美麗ちゃん……っ!」
シュバッと、仁奈が俺から離れた。俺が今まで見て来た中で、一番早い動き。
「付き合うのさえ渋々了承したくらいなのに、路上で抱き合うなんて言語道断なんですけど⁉これだから煮干し女は!」
「ま、抹茶ジュース買いに行ってきます!」
「いらないわよ!太らせる気⁉」
「ご、ごめんなさいっ」
美麗の迫力に、思わず後ずさる仁奈。片手でちょんと俺のシャツを掴んでいたけど……美麗の睨みで、これもダメな行為だったと気づいたらしく慌てて離した。