ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「俺はね、正直に言うとホッとしてる」

「え、どうして?」

「仁奈が俺のためにピアスを開けてくれるっていったのは嬉しかった。でも、それって〝仁奈に傷をつける〟って事だからさ。仁奈には痛い思いをしてほしくないんだ」

「雅……」


頭を撫でると、仁奈は眉を下げて笑った。かわいい。申し訳なさそうな顔をして、だけどどこか安心したような顔をして。こういう時の仁奈はどこか神秘的で、目が離せない。


(仁奈はモテるだろうから気を付けないとね)


本人は無自覚だけどさ。自分に底知れない魅力があるってことに気付いて、もっと警戒してほしい。今日だって廊下で響谷が話し掛けてきてたしさ。


「そうだ、明日も数学の小テストあるって言ってたよ。もし不安なら今からどこかで勉強を、」

「み、雅」

「うん?」


仁奈を見ると、なぜか赤面していて。思ってもない反応に驚く。何に恥ずかしがったのかな?

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