ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「えっとね、仁奈」
「う、うん……!」
返事だけで力が入ってる。これじゃ本番の時は、ガチガチだろうな。でも……それでいいんだよ仁奈。だって焦ることはないんだし。
「仁奈はさ、不安?」
「え……う、うん」
「俺もね、すっごく不安」
「え?」
雅なのに?って顔してる。思ってることが全部顔に出ちゃうのも、可愛い。
「前も言ったけど、仁奈に優しくできなかったらどうしよう、仁奈に嫌われたらどうしようって不安だよ。っていうか仁奈が初めてなら、必ず俺は仁奈を傷つけることになるから……うん。ごめんねって気持ちと、不安が大きいな」
「必ず傷つけるって……?」
「えっと、つまり……小夜ちゃんが言う通り。初めは痛いってこと……です」
「!」
ピャッと、今にも尻尾を蒔いて逃げそうな仁奈を、急いで胸の中に抱き留める。
「どーどー、焦らなくていいから。この話をしても仁奈が逃げなくなった時。そこからゆっくり始めればいいんだよ。今お互いが不安なら、それがとれた時に、俺たちのペースで進んでいけばいい。焦るものでもないしね」
「雅……」
「ちょっとは安心した?」
「うん、ありがとう」
ヘラリと笑う仁奈の顔に不安はなく、いつもの笑顔。良かった。ちょっとは肩の荷がおりたみたい。