ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「そうだ雅、言いたいことがあるんだけど」

「ん?新田さんから別のアドバイスもらったの?」

「ううん、違くて」


俺の目を見て、照れくさそうにモゴモゴ口を動かす仁奈。不思議に思って首を傾げると、


「今日で付き合って一週間。私たちの最初の記念日……です」

「!」


ふと、少し前のことを思い出した。


『わたし的に、もう記念日はコリゴリだなぁ』


顔に影を落として、はかなげに笑う仁奈をこの目で見た。だけど彼女は、今日がその記念日だと自ら教えてくれた。

あぁ。きっと仁奈は、


『俺は記念日、好きだよ』


俺が言った言葉を、覚えててくれたんだ。

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